ロシア文化事典

 丸善出版の『ロシア文化事典』が届いた。

 引く事典というよりも、読む事典だと思う。特に若い学生の皆さんに読んでもらえると、うれしい。私自身も平凡社の『ロシア・ソ連を知る事典』の旧版と、研究社露和辞典で育ったのだ。

 執筆した項目は「オリンピックとパラリンピック」、「伝統的遊戯と運動」、「新体操とフィギュアスケート」、「ソルジェニーツィン」。文学研究しないからスポーツの記事ばかり、という感じもする話なのだが、実は項目を立てられている作家は実は6人しかおらず、プーシキン郡伸哉)、ゴーゴリ(安達大輔)、ドストエフスキー(望月哲男)、トルストイ中村唯史)、ナボコフ(秋草俊一郎)、ソルジェニーツィン(岩本)のみ。6つの高峰のひとつのガイドをやらせてもらったというのは、やはり感慨深い。

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がんばれベアーズ

 1講時のゼミで、野球関係の学生と『がんばれベアーズ』を見る。

 子供の頃に流行った映画で、その頃は子供が主役の映画だと思っていたのだけれど、今、見直してみると、コーチの心理がテーマになっているものだった。勝ちにこだわるコーチというのは子供のために指導をしているようでいながら、実はそれは自分のためのものだったりするし、その背後には劣等感が潜んでいたりもする。そんな部分がきちんと描かれている映画だった。

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ロシア・ポストモダニズム文学の身体観

 早稲田で開催された日本ロシア文学会に行く。

 25日は本当は学会のプレシンポジウムに行くべきだったのだけれど、本務校の仕事が終わってからだと間に合わないので、プレシンポではなく五反田のゲンロンカフェへ。しかし、東京の大雨の影響で、到着が予定よりも1時間遅れてしまった。

 ゲンロンカフェの講師は鴻野わか菜さんと本田晃子さんで、タイトルは「ユートピアを記憶/記録する」。鴻野さんの話は増田明美さんのような口調で、それだけでも面白かったのだが、チュッチェフとデニーシエワへの23歳差の恋について「これも不可能なものが実現してしまった例ですね」とバッサリまとめていたのが面白すぎた。

 26日午後は義理もあるので、札幌でお会いしたグシコフさんとココーリンさん、それから同僚の宮川先生の報告するパネルに。何の話をするのかわからずに行ったのだけれどココーリンさんの報告は私が博士論文で扱ったオレーシャ『羨望』についてのもので、宮川さんの報告は私が翻訳しているブーニンの詩についてのものだったので、ある種の心地良さと共に聞くことができた。

 27日午後は松下隆志さん、笹山啓さん、越野剛さんと私とで組織したパネル「ロシア・ポストモダニズム文学の身体観」。昼食後の時間帯だったので、人が集まるのか心配でもあったのだけれど、良い雰囲気の中で終えることができた。越野さんの質問も会場からの質問も議論を整理するのに役立つもので、それも良かった。

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1920-30年代のソ連の映画と文学

 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターのセミナー「1920-30年代のソ連の映画と文学」を聞きに行く。講師はペテルブルグ大学のニコライ・グシコフさんとアンドレイ・ココーリンさん。プロタザーノフの『聖ヨルゲンの日』と『持参金のない娘』、それからアブラム・ロームの『厳格な若者』(邦題は『未来への迷宮』)についての報告だった。

 終了後の懇親会の後、JRタワーの展望台に彼らを案内した……というか、日本人の我々も昇るのは初めて。想像していた以上に美しい夜景を見ることができた。

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ホップ園跡地の碑

 札幌市中央図書館に行ったら、「開拓使とビールのおいしい関係」という展示をやっていた。

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 さて、この展覧会で、札幌大学のそばに「ホップ園跡地の碑」があると知り、次の日に探してみた。車の入れない区画に碑はあったのだが、放課後の小学生たちの遊び場になっているようだった。

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20世紀ロシア文化全史

 日本ロシア文学会の学会誌のために、ソロモン・ヴォルコフ『20世紀ロシア文化全史』(河出書房新社)の書評を執筆した。

 岩本和久「ソロモン・ヴォルコフ著・今村朗訳『20世紀ロシア文化全史』」『ロシア語ロシア文学研究』51号、2019年、82-88頁。

 強調したのは次の2点。

 (1)出版社のサイトでは「綺羅星のようなスター芸術家の肖像を、時の権力者との関係をふまえて物語性豊かに描いた」と紹介されている本書だが、重点が置かれているのは「綺羅星」よりも「権力者との関係」の方で、スターリンフルシチョフ、ブレジネフ、ゴルバチョフエリツィンというソ連指導者の存在感が芸術家以上に際立っている。

 (2)ノーベル文学賞や非公式芸術をめぐる東西冷戦期の叙述においては、「政治による芸術の迫害」というような単純な二項対立とは別の力学が強調されている。

 百科事典としてではなく、政治評論として読むべき本のように思える。