中日異文化コミュニケーション

 孔子学院で講演会があるので、学生さんと一緒にどうぞ、というお誘いを受けた。講師は天津外国語大学教授の修剛先生。中国の日本語教育界を担っている方らしい。

 「中日異文化コミュニケーション――同と異のとらえ方」というタイトルだったのだが、外国語教育が専門の方なので、翻訳をめぐる誤解やトラブルの話が中心だった。ダジャレも満載で、米原万理さんのような人は中国にもいたんですね。

 文化相対主義の説明をしながらも、靖国問題尖閣問題をめぐる中国の立場が正当化されるのだが、中国は体制の異なる国なのだから、そういう主張になるのも不思議ではない。むしろ、日本や中国で互いの国に対する反感が高まっていること、中国が日本に対して脅威となっていること、中国の近代化において日本文化が大きな役割を果たしたこと(たとえば「人民」などの概念を漢字で表現したり、マルクス主義を紹介したりした)を積極的に紹介していて、好感を覚えた。

 とはいうものの、今や歴史認識問題はあまりにも深刻なものになっていて、相互の文化に対する敬意だけで解決したり、棚上げしたりするのは難しい。それは日中韓だけの現象ではなく、中東欧など世界の各地に見られる葛藤だ。同じ価値観を共有する、相互の価値観の違いを認め合うといったことは、いよいよ困難になっている。それでも共通の利益を通して友好関係を実現することはできるだろうし、積極的な人的交流はその基盤となるに違いない。