市立図書館も道立図書館も

 ロンドンから帰国して以来、とてつもなく忙しい。オムニバス授業と出張の補講と論文の締め切りが重なっているのが原因だ。今週は授業が11コマとヨールカ祭がある。その上、欧文で書評を書かねばならないのだが、これにはほとんど手が付けられない。

 そんな時に授業で必要な資料を探していて知ったのだが、道立図書館も札幌市の中央図書館も今は工事で閉鎖されているのだった。同時に閉鎖されるというのは、悪夢のようだ。数日前に予約すれば貸し出してくれるそうなのだが、そのくらいの時間的ゆとりがあれば生協の書籍部やamazonで注文できる。

 昨日は江別の道立図書館、市の中央図書館、北大図書館とめぐり、今日は市の中央図書館と大通のジュンク堂に行った。これから本務校の図書館とミュンヘン大橋コーチャンフォーにも行く。宝探しのようだ。何日も苦労して探した本はとても貴重なものに思えるのだが、何しろ忙しいので、400頁の和書をとてつもなく集中して20分で読むような事態になっている。

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ソヴィエト文学と主人公

 中部大学編『アリーナ』20号は「ソヴィエトの世紀」特集なのですが、「ソヴィエト文学と主人公」という私の論文も掲載されています。

 岩本和久「ソヴィエト文学と主人公」『アリーナ』20号、2017年、41-50頁。

 フロイトの「詩人と空想すること」を出発点に、社会主義リアリズム文学とソルジェニーツィンの作品との類似、ソルジェニーツィンの小説とグロスマンの小説の差異を語っています。

 過去のソヴィエト文学研究を踏まえながら文学構造の水準にとどまっているため、ロシアの専門家でも文学研究者でない方々からは当惑されるかもしれないのですが、自分としてはランクル=ラフェリエールの『ロシアの奴隷精神』を読んでから、これまで退屈にすら思えていたグロスマンの作品で表現されている心理、自責の念やマゾヒズムがしっくり理解できたところもあって、そのあたりを文章にしてみました。

ジャスパー・ジョーンズ!!

 ロンドン滞在最終日。移動日なので予定は入れていなかったのだが、ロイヤル・アカデミーでジャスパー・ジョーンズ展と「デュシャンとダリ」展を見ることにした。
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 ジャスパー・ジョーンズ展は本格的なものだった。カバコフやプリゴフといったロシアの美術ばかり見てないで、世界のアートにも目を配れと神様に言われたような気がする。
 しかし、ロンドンは本当に文化的だ。

どんどん遡る

 サーチ・ギャラリーの「ART RIOT」展に行く。オレグ・クリークのイスラム・プロジェクトやAES+Fの回顧、それから「青い鼻」、プッシー・ライオット、ピョートル・パヴレンスキーの最近の活動など。

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 今回、計画していた予定はこれで順調に消化されたのだが、ロンドンはやはりすごい街で、ロシア関連の展覧会が次々と発見される。

 まずはコートールド・ギャラリーでハイム・スーチンの肖像画展。ここではゴッホの「耳を切った自画像」やマネの「フォリー・ベリジェールのバー」が常設展示されています。

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 それから、天下の大英博物館でスキタイ文化の展覧会。これはエルミタージュ美術館のコレクションだ。金細工に圧倒され、その後で常設展のロゼッタ・ストーンを観察し、パルテノン神殿の石像に言葉を失い、一日が終了したのであった。

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 現代アートから古代スキタイまで、どんどん時代を遡ったことになる。 

В будущее возьмут не всех

 ロンドン初日はまず、テート・モダンでカバコフの回顧展。「宇宙へ飛び去った男」、「母のアルバム」、「皆が未来に運ばれるわけではない」のインスタレーションがメインで、それ以外に初期の絵画作品や近年の絵画作品など。「宇宙へ飛び去った男」を見るのは1997年以来だが、あの時はポッカリと開いた天井の穴に支えを失った笑いを感じたのだけれど、今回は空中に消えるというヴィジョンを追って、精緻に部屋を作り上げていくカバコフの作業を思って、胸に迫るものを感じた。

 テートの別の部屋ではロシア革命のポスターや写真を集めた「ロシアの上の赤い星」も開催中で、デイネカの「スタハーノフ労働者たち」、「1917」、「1937」がペルミから来ていた。

 常設展にはピカソ「泣く女」からヒト・スタヤル「How not to be seen」まで、有名な作品がいくつも展示されているのだが、胸が熱くなったのが森山大道の北海道の写真で、俯く人たちの背中や坂道を駆け上る犬や車の水しぶきなど、とにかくかっこいいものなのだが、そうか、2012年にテートで展覧会をやっていたのか。

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 5時間くらいテートを駆け足で回り、それから美術館前のベーカリー・カフェでクスクスを食べ、次は「カルバート22」というギャラリーでプリゴフの回顧展を見る。巡礼僧のように展覧会を回ると、僧侶のような顔つきでパフォーマンスをする今は亡きプリゴフの映像にたどり着いたのだった。

ANAでヒースロー

 昨日の夜、ヒースロー空港に来た。

 千歳から乗れる便はANAJALしかなく値段もほぼ同じなので、乗り慣れているANAを使ったのだが、エコノミークラスなのに、「一ノ蔵」を飲むながらすき焼きや魚の照り焼きを食べるという素晴らしい経験ができた。「一ノ蔵」はこの秋からのサービスだという。

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