黄金の手
今年の秋はチェーホフ『サハリン島』関係の行事が続いたのだが、その中で知ったソフィヤ・ブリュフシテインについてコラムを書いた。
岩本和久「黄金の手」『北海道新聞』2017年12月20日夕刊、4面。
19世紀の女詐欺師で、シベリア送りにされても2度も3度も脱走するものだから、最後にはサハリンへ島流しになったという人。サハリンを訪問したチェーホフも彼女に会っていて、そのことを『サハリン島』の中に記している。
彼女を主人公にした「ソーニカ 黄金の手」というテレビ・ドラマが2007年に作られていて、2010年には続編も放映されたのだそうで、そのせいか彼女に関心を寄せるロシアの人は多いようだ。チェーホフ関連で訪れた博物館や講演会では、その名前を何度も耳にしたのだった。
藤井一行とソ連研究
『アリーナ』20号で、「藤井一行とソ連研究」という小特集が組まれている(323-497頁)。これまで公には伝えられていなかった藤井一行先生のご逝去の知らせと共に、ご遺稿が掲載されている。
藤井先生は札幌大学の開学時の教員だったという。1997年に一度だけ、富山大学でお目にかかったことがある。日本ロシア文学会の翌日にインターネットについての談話会のようなものを開催されていて、それに私も顔を出してみたのだ。
当時は民主的なメディアと期待されたインターネットだったが、情報の流通の規模とスピードを変革したものの、暴力をも拡散・増幅してしまったのは間違いないだろう。
ともあれ、ご遺稿の掲載された号に自分の論文を書けたというのも、何かのご縁かもしれない。この号は大切にしよう。
市立図書館も道立図書館も
ロンドンから帰国して以来、とてつもなく忙しい。オムニバス授業と出張の補講と論文の締め切りが重なっているのが原因だ。今週は授業が11コマとヨールカ祭がある。その上、欧文で書評を書かねばならないのだが、これにはほとんど手が付けられない。
そんな時に授業で必要な資料を探していて知ったのだが、道立図書館も札幌市の中央図書館も今は工事で閉鎖されているのだった。同時に閉鎖されるというのは、悪夢のようだ。数日前に予約すれば貸し出してくれるそうなのだが、そのくらいの時間的ゆとりがあれば生協の書籍部やamazonで注文できる。
昨日は江別の道立図書館、市の中央図書館、北大図書館とめぐり、今日は市の中央図書館と大通のジュンク堂に行った。これから本務校の図書館とミュンヘン大橋のコーチャンフォーにも行く。宝探しのようだ。何日も苦労して探した本はとても貴重なものに思えるのだが、何しろ忙しいので、400頁の和書をとてつもなく集中して20分で読むような事態になっている。