ノーベル文学賞と新しい世界の文学

 某高校で「ノーベル文学賞と新しい世界の文学」というテーマの出前授業を行った。

 第2次大戦後の巨匠の受賞、反体制作家の顕彰、非西欧文学の紹介といったノーベル文学賞の過去の諸傾向を振り返った上で、ここ3年の新しい動きに焦点を合わせてみた。取り上げた作品は、アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』、『セカンドハンドの時代』、ディラン「ライク・ア・ローリング・ストーン」、イシグロ『日の名残り』、『私を離さないで』。

 「ライク・ア・ローリング・ストーン」や『日の名残り』は失敗に終わった人生を語り、それ以外の作品は成功の可能性を奪われた人々について語っている。このラインナップだと社会的な成功とは別の生について考えざるを得ないわけで、それは文学のひとつの側面ではあるのだが、未来への夢を模索する出前授業という場には重すぎた内容だったかもしれない。

 しかし、若い人たちにこそ日の当たらない場所について考えてほしいし、そういう意味では自分なりに誠実に講義をしたつもりである。