ニューヨーク公共図書館

 もう先週のことだが、フレデリック・ワイズマンの『ニューヨーク公共図書館』を見た。

 社会派のドキュメンタリー監督が、図書館の財政難や使命を議論する会議をスクリーンに映したくなるというのは、まあ、そういうものなんだろうなと思うのだが、そのような世界のあちこちで起きていそうな問題よりも、文学作品への言及のあざとさが気になった。

 老人たちの読書会のテクストが、80歳近い爺さんの恋心を描いたガルシア=マルケスの『コレラの時代の愛』。視覚障害者のために録音されるのは、何とナボコフの『闇の中の笑い』(『マルゴ』)。これ、主人公が失明して散々な目にあう話だよ……朗読されるテクストはマルゴの脱衣を描いていて、やはり魅力的だったが。

 マイルズ・ホッジスによる詩の朗読は印象的だった。あざとさではなく、本物らしさがあった。

f:id:kazuhisaiwamoto-su:20191007001513j:plain