ヴロンスキーの物語

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 ロシアでは賛否が分かれたというシャフナザーロフ監督の『アンナ・カレーニナ ヴロンスキーの物語』。もともとはテレビの連続ドラマで、映画はそのダイジェストなのだろうけれど、それほど忙しい感じも浅薄な感じもなく、映画として自然に見ることができた。

 かなり不評だったのは、ヴロンスキーを中心に物語が語られていて、アンナと並ぶ主人公とも言えるレーヴィンが登場せず(キティ―は少しだけ出てくる)、トルストイの原作に存在しない日露戦争が描かれているためである。ただ、原作でもヴロンスキーは戦争に行くわけだし、悲惨な戦場の場面はアンナの鉄道自殺を生々しく想起させる契機ともなっているので、原作に新たな光を当てるという意味では悪い選択ではなかったと思う。優美でも心温まるものでもない、陰惨で重苦しい、血塗られた『アンナ・カレーニナ』。