ヒトラーと戦った22日間

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 『ヒトラーと戦った22日間』を見た。

 『ナイト・ウォッチ』の主演俳優として世に出た、コンスタンチン・ハベンスキーの監督第1作。脚本や主演もハベンスキーが務めているが、しかし、ハベンスキーはクリント・イーストウッドでも北野武でもない。狂った宴の場面はカット数の多いエネルギッシュな演出がなされているが、詩情には欠ける。だが、その分、殺人という苦いテーマは生々しく伝わってくる。

 ナチス・ドイツユダヤ人を虐殺する一方で、蜂起するユダヤ人はナチスの軍人を1人ずつ暗殺していくのだが、その殺害は英雄的に描かれてはいない。囚人たちは一線を越える形で殺人を犯し、また、最後まで殺しに踏み切れない者もいれば、心を乱す者もいる。殺害はあくまで苦い行為として描かれている。こういう詩情に乏しい殺人というのは、1990年代以降のロシア文化の特徴と言えるかもしれない。