ブリタニカ百科事典創刊250周年特別版

 このほど刊行された『ブリタニカ国際年鑑2018』の記事を、いくつか執筆している。

 今年の巻は「ブリタニカ百科事典250周年特別版」とのことで、古い販の記事21本と著名人の書いた記事9本が収録された。21本の記事の中には「エーテル」や「女性」といった常識の変化を感じさせるものもあれば、「子供の遺棄」といったショッキングなものもある。

 著名人の書いた記事は、その顔ぶれに眩暈を覚えてしまう。今は記事の中に収められた人物が、自分で記事を書いているのである。アインシュタイン「時空」、アンセル・アダムズ「写真芸術」、マリー・キュリーラジウム」、サダト「エジプトと中東和平」、トロツキー「レーニン」、ヒッチコック「映画監督」、フロイト精神分析」、ダライ・ラマ14世「慈悲の心」、ワット「蒸気機関」というのが、そのリストだ。

 今回はトロツキー「レーニン」の翻訳を担当することになった。光文社古典新訳文庫に収められている回想とは違い、世界の読者にレーニンの強靭さを伝えようとする、熱気にあふれた文章だった。

 国際年鑑では例年、「ロシア文学」の項目の日本語訳を担当しているのだけれど、今回は「250周年」ということで英語版の年鑑の構成が変わってしまったらしく、「ロシア文学」の項目は翻訳ではなく、私が自分で執筆することになった。ダニルキン『レーニン』、ブイコフ『6月』、ニコラエンコ『ボブルイキン殺し』、ペレーヴィン『iPhuck10』、ソローキン『マナラガ』について紹介している。

 ちなみに、表紙にはトランプと習近平、裏表紙には小池百合子カズオ・イシグロの写真が使われているので、数年もすれば思い出深い本になるだろう。