皆が未来に

 年末に訪れたテート・モダンのカバコフ展について、北海道新聞にコラムを書いた。

 岩本和久「皆が未来に」『北海道新聞』2018年3月5日夕刊、4面。

 今回の回顧展のタイトルは「皆が未来に運ばれるわけではない」というもので、同名のインスタレーションが展示されていたのだが、これはもともとはソ連期にカバコフが書いた短い文章の題である。夏のキャンプに連れて行ってもらえない素行不良の子供たちに、皆が列車に乗れるわけじゃないんだ、と校長先生が説教をするという内容だ。

 列車に乗せてもらえない不運な人々に寄り添おうとする文章で、コラムもそういう方向でまとめたのだが、カバコフの作品にはそんな優しさだけではなく、俗悪な人々を突き放すかのような厳しさもある。優しさと厳しさの双方を必要とするのは、現代の日本も同じだろう。