神と革命

 下斗米伸夫『神と革命』(筑摩選書)の書評を共同通信社のために書いたのだが、まずは『北日本新聞』に掲載されたらしい。

https://webun.jp/item/7416143

 いろいろと問題はある本で、たとえば、「キプチャク汗国」のことが「チンギス汗国」と表記されていたりするのは高校生でも困惑するはずなのだが、校正段階で何とかならなかったのかと思う。

 ブローク「12」のイエス・キリストの表記は古儀式派を思わせるという指摘も、そういう議論は確かにあるようなのだが、しかし、詩のリズムに母音の数を合わせるための処理にすぎないという解釈も存在している。

 そういった細かいミスは歴史研究者であればもっと無数に見出せるのだろうが、本質的な問題は「ロシア革命は古儀式派の文化の復活」という大きな枠組みを提示することに叙述の大半が割かれている一方で、政治家、労働者、実業家、芸術家それぞれの動きについて実証的な分析がなされていないことだろう。「誰それの出身地には古儀式派が多かった」といった出自探しが論証の大半を占めているのだ。それについては書評の中でも、やんわりとした形ではあるが指摘しておいた。