Carpe diem

 金曜日の1校時はスラヴニコヴァの「チェレパーノワの姉妹」を読んでいる。学部生には難易度が高すぎるのだが、あんまり簡単なテクストを選んでも「新しく来た先生、たいしてロシア語できないじゃん」と誤解されたり、「こんな簡単なテクストなら自動翻訳で充分だから、授業に出なくていい」ということになりそうだからね。こういう難易度の高いテクストは、コンピューターにはまず訳せないだろう。

 副動詞や形動詞がやたらと出てくるので、文法のおさらいにはなるはずだ。めったにお目にかかれない単語も多いので、「これは1~2年生のうちに覚えておくべき単語だから、知らないのであれば反省してください」、「これは今、覚えるべき単語」、「これはあまり使われない単語だから、今は覚えなくてもいい」と3種類に分けて伝えている。

 しかし、以前にさっと読んだ時には気づかなかったのだが、ゆっくり読むとこのテクストの密度には驚くしかない。町を沼地が取り巻いていて、沼地は植物に覆われて熊みたいに見えて、その上に立つと熊の腸の音が聞こえてくるような気がする、という内容がメタファーに次ぐメタファーで語られていく。こういう芸術の極みのようなテクストを朝から読めるのは本当に幸せなことだ。

 2校時は映画史の授業なのだが、昨日は『戦艦ポチョムキン』を見せた。やっぱりカメラのアングルが決まっているよな、もうそれ以外に言うことないよな、と思って見ていると、またしても幸せな気分になってしまう。

 やっぱり文学とか映画って良いものなんだよな。ただ、当然のことだが、こんな幸せな時間が人生の中でいつまでも続くはずはない。だから、今日という日を楽しまなければ。