否定しない人

 北の町からまた訃報が届いた。前任校で一緒に働いていた古川碧先生が、お亡くなりになったという。

 古川先生は大学に隣接する中学校の校長先生をされていて、退職後に大学で後進を育てることとなった。大学の任期を終えた後も、学生相談やそのシステムの整備にご尽力されていた。

 それなりの立場まで昇進してから大学で働くことになった方の場合、それまでの仕事の価値観から大学の文化を批判することが多いのだけれど、古川先生は研究者の文化を尊重してくれた。いつも周囲から一歩ひいているように見えたので、本当のところはどうお考えになっていたのかわからない。私のこともロシア文学なんかやっているからには共産党のシンパに違いないと勘違いしていらしたようにも見えるのだけれど、それでも私の研究活動を尊重してくれているのは理解できた。自分の趣味や価値観や生き方を絶対視して、それを強いるようなところはまったくなかった。「文学なんてわからない」とか「研究なんかしなくていい」とか言われてしまう田舎町では、何ともうれしく思えた。

 そんな人はどこにでもいそうなのだが、実はほとんどいない。だから、とても残念に思う。