最前線

 大学での恩師が有名な作家の人たちとサハリンを訪問しているようなのだが、訪問団の通訳を担当しているのは、かつて稚内に留学していた韓国系の女性らしい。同行取材の新聞記者といっしょに写った写真をFacebookで見て、驚いた。
 彼女が稚内にいた時には、私も漢字の授業を週一で担当していた。驚いたというのは都会の出版界の人たちの世界と、私の生活していた世界は、私にとってはまったく断絶したもので、異次元やパラレルワールドといったものに等しく、だから、その2つの世界の人々が交流しているというのは、何かSF小説のような奇跡に思えてしまうのである。
 一方で私もサハリンや稚内といった場所から離れてしまったのだが、そのことで前線から後方基地に退いた兵士のような気持ちになったりもする。Facebookの写真が感慨深かったのは、それが私がかつていた、そして、今はもういない「最前線」を写したものだったからでもあろう。
 日本とロシアが今、戦争をしているわけではないから、「国際交流の最前線」と言い換えた方がいいのだろうか?ともあれ、国境地帯というのは都会のように人や物がたくさんあるわけではなく、また、異文化接触に伴う緊張感の漂っている独特な空間なのである。

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