ソヴィエト文学と主人公

 中部大学編『アリーナ』20号は「ソヴィエトの世紀」特集なのですが、「ソヴィエト文学と主人公」という私の論文も掲載されています。

 岩本和久「ソヴィエト文学と主人公」『アリーナ』20号、2017年、41-50頁。

 フロイトの「詩人と空想すること」を出発点に、社会主義リアリズム文学とソルジェニーツィンの作品との類似、ソルジェニーツィンの小説とグロスマンの小説の差異を語っています。

 過去のソヴィエト文学研究を踏まえながら文学構造の水準にとどまっているため、ロシアの専門家でも文学研究者でない方々からは当惑されるかもしれないのですが、自分としてはランクル=ラフェリエールの『ロシアの奴隷精神』を読んでから、これまで退屈にすら思えていたグロスマンの作品で表現されている心理、自責の念やマゾヒズムがしっくり理解できたところもあって、そのあたりを文章にしてみました。

ジャスパー・ジョーンズ!!

 ロンドン滞在最終日。移動日なので予定は入れていなかったのだが、ロイヤル・アカデミーでジャスパー・ジョーンズ展と「デュシャンとダリ」展を見ることにした。
 f:id:kazuhisaiwamoto-su:20171206024434j:plain
 ジャスパー・ジョーンズ展は本格的なものだった。カバコフやプリゴフといったロシアの美術ばかり見てないで、世界のアートにも目を配れと神様に言われたような気がする。
 しかし、ロンドンは本当に文化的だ。

どんどん遡る

 サーチ・ギャラリーの「ART RIOT」展に行く。オレグ・クリークのイスラム・プロジェクトやAES+Fの回顧、それから「青い鼻」、プッシー・ライオット、ピョートル・パヴレンスキーの最近の活動など。

 f:id:kazuhisaiwamoto-su:20171205175640j:plain

 今回、計画していた予定はこれで順調に消化されたのだが、ロンドンはやはりすごい街で、ロシア関連の展覧会が次々と発見される。

 まずはコートールド・ギャラリーでハイム・スーチンの肖像画展。ここではゴッホの「耳を切った自画像」やマネの「フォリー・ベリジェールのバー」が常設展示されています。

 f:id:kazuhisaiwamoto-su:20171205175714j:plain

 それから、天下の大英博物館でスキタイ文化の展覧会。これはエルミタージュ美術館のコレクションだ。金細工に圧倒され、その後で常設展のロゼッタ・ストーンを観察し、パルテノン神殿の石像に言葉を失い、一日が終了したのであった。

 f:id:kazuhisaiwamoto-su:20171205175742j:plain

 現代アートから古代スキタイまで、どんどん時代を遡ったことになる。 

広告を非表示にする

В будущее возьмут не всех

 ロンドン初日はまず、テート・モダンでカバコフの回顧展。「宇宙へ飛び去った男」、「母のアルバム」、「全てが未来に運ばれるのではない」のインスタレーションがメインで、それ以外に初期の絵画作品や近年の絵画作品など。「宇宙へ飛び去った男」を見るのは1997年以来だが、あの時はポッカリと開いた天井の穴に支えを失った笑いを感じたのだけれど、今回は空中に消えるというヴィジョンを追って、精緻に部屋を作り上げていくカバコフの作業を思って、胸に迫るものを感じた。

 テートの別の部屋ではロシア革命のポスターや写真を集めた「ロシアの上の赤い星」も開催中で、デイネカの「スタハーノフ労働者たち」、「1917」、「1937」がペルミから来ていた。

 常設展にはピカソ「泣く女」からヒト・スタヤル「How not to be seen」まで、有名な作品がいくつも展示されているのだが、胸が熱くなったのが森山大道の北海道の写真で、俯く人たちの背中や坂道を駆け上る犬や車の水しぶきなど、とにかくかっこいいものなのだが、そうか、2012年にテートで展覧会をやっていたのか。

f:id:kazuhisaiwamoto-su:20171204154946j:plain

f:id:kazuhisaiwamoto-su:20171204155018j:plain

 5時間くらいテートを駆け足で回り、それから美術館前のベーカリー・カフェでクスクスを食べ、次は「カルバート22」というギャラリーでプリゴフの回顧展を見る。巡礼僧のように展覧会を回ると、僧侶のような顔つきでパフォーマンスをする今は亡きプリゴフの映像にたどり着いたのだった。

ANAでヒースロー

 昨日の夜、ヒースロー空港に来た。

 千歳から乗れる便はANAJALしかなく値段もほぼ同じなので、乗り慣れているANAを使ったのだが、エコノミークラスなのに、「一ノ蔵」を飲むながらすき焼きや魚の照り焼きを食べるという素晴らしい経験ができた。「一ノ蔵」はこの秋からのサービスだという。

f:id:kazuhisaiwamoto-su:20171203162631j:plain

広告を非表示にする

シャガールの時空間

 東京ステーションギャラリーで開催中の「シャガール 3次元の世界」展についてのコラムを、『北海道新聞』に掲載した。

 岩本和久「シャガールの時空間」『北海道新聞』2017年11月29日夕刊、4面。

 シャガールの彫刻を見ると、彼の絵画の運動性や流動性がいっそう伝わってくる、という内容。

広告を非表示にする

岡林茱萸『ロシアの詩を読む』

 岡林茱萸『ロシアの詩を読む』(未知谷)の書評を書いた。

 岩本和久「詩の言葉と著者との対話―20世紀ロシアを生きた15人の詩人の詩の翻訳と解説」『図書新聞』3329号、2017年12月2日、5面。

 最近、私が書評を頼まれる本は書きづらいものが多いのだが、この本もそうだった。期待して読み始めて、冒頭のフレーブニコフ論などはそれなりに面白かったのだけれども、読んでいるうちに何の本なのか分からなくなった。誰に向けて、何の主題が語られているのか、まったく分からなくなったのである。

 それでも手探りで読む進めるうちに、著者の文学観と論じられているテクストのぶつかり合うさまが見えてきた。ああ、これは著者が読者に詩作品を紹介しているようでいながら、実は著者と詩が対話しているのだ、と思ったら、書かれている内容がすとんと理解できた。

 書評に書いたのも、そんな話である。